http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/toushin20180328[2][2][2][2].html
4月17日付で配信された「NEWSポストセブン」は、本組合が進める新ゴミ処理施設の事業用地について報じました。地権者である天理教に対して土地代の「3倍」に当たる多額の賃借料を「貢ぐ」ものであり、地元選出の高市経済安全保障大臣や、最近実施された知事選がこれに関連しているかのような誤った印象を与えるものです。
本事業用地が天理教からの借地であることは本事務組合発足前から公にしており、賃借料の鑑定額も組合議会に明示し、その同意の下に事業を進めてきました。ポスト記事が引用した議事録にもあるとおり、高市大臣はじめ奈良県選出の国会議員への報告や要望は、環境省補助金を無事確保するために行っており、用地については全く関与いただいていません(※環境省補助金の要件として、売買か賃貸借かは問われていません)。
管理者(並河)個人として当時の知事への不信感は深まりましたが、知事選の構図とも無関係です。無理やりに政局と絡めて、記事に人目を引く手法としか言えません。
(参考1)ごみ処理広域化検討会議(天川サミット後)議事録
http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/lancelot/common_files/images/public/kubityoukaigi1.pdf
またポスト記事は、借地が地元理解のために必要だったという本組合説明を否定するため、売買すべきとの意見が出た一部説明会の議事録を引用しました。地元説明会では、自治会によって、あるいは参加者によっても賛成反対の濃淡も論点も様々ですが、賃貸借の是非よりも、環境悪化等への懸念の払しょくが最大のテーマでした。
比較的賛成の立場から、売買が有利との発言も少数ありました。ただし、売買可能な他の土地、または未利用の市有地への変更を求める趣旨から、賃借での用地確保に疑問を投げかけるケースの方が多数でした。それよりも、他の自治会の理解が進んでも借地契約間際の終盤まで説得が困難だった自治会等で議論になったのは、施設の永続化の回避と次期施設の地域外への移転の保障でした。この地元要望に沿いつつ事業化していくためには「更新のない定期借地」が必要であったと言う本組合の認識は変わりありません。
地権者の意向が当初から売買ではなく賃貸借であったことは事実であり、地元説明でも明言しています。ですが、土地所有権を持つ者の自由であり、行政側に売買を強制する権利はありません。また、賃貸借であっても天理市の老朽化施設の長寿命化(約43億円)が不要となり、奈良県が当初550億円の効果と見込んだ広域化が可能となりました。天理市を含む本組合にとって、財政上極めて有利な事業となったと考えています。
以下、売買の可能性がなかった点を含め、借地に至った経緯等を説明します。なお、本説明書の公表に合わせて、ポスト記事が「内部文書」とするこれまでの地元説明会の議事録も全て本組合ホームページで公開しています。
http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/toushin20180328%5b2%5d.html
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1.事業構想段階において借地に至った経緯
(1)本組合事業のスタートは、10市町村の広域化ではなく、天理市の現ごみ処理施設の老朽化対策でした。平成36年(令和6年)には耐用年数を迎える見込みで、多額の改修費用(43億円と試算)をかけて長寿命化しても一時しのぎに過ぎないことから、新設する方針を平成26年度に決定しました。
新設を計画するに当たり、過去の用地検討を再検討した結果、現在の事業用地を選定しました(詳細は下記参照)
(参考2)平成27年11月30日作成「新ごみ処理施設の候補地選定に係る経緯について」
http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/lancelot/common_files/images/public/senteikeii.pdf
(2)市側が選定した事業用地の地権者は、天理教でした。管理者から直接、地権者に協力を打診したところ、地元住民の理解を前提に「賃貸借であれば協力する」との回答を得ました。当時の地権者は、以下の理由から基本的に天理教本部周辺の土地の売買は行わない方針でした。
・天理市や奈良県在住者だけでなく、全ての信者からの浄財で取得した土地であること
・特に、本事業用地を含む白川ダム周辺は、過去に地元自治会の理解を得て大規模に開発してきたエリアであり、関係の病院やスポーツ施設も集積している重要な地域であること
・そのため、所有権を手放すことには、教内関係者の理解を得るのが困難であること
(3)天理市としては、売買であれ賃貸借であれ、地権者の意向に反して強制する権限は持ちません。実際に、教会関係者内から本事業への協力自体に反対の声もある中、賃貸借であっても、市民生活に欠かせない事業への多大な貢献と捉えました。
また、現施設が稼働している期間に、環境影響評価を経て新施設を稼働させるには、時間的にギリギリのタイミングであること、既に道路へのアクセスや造成も行われている土地であることから、賃貸借で当該土地を確保できれば、43億円と見込んだ大規模修繕も回避でき、事業全体として市財政の負担を大幅に軽減できると判断しました。
加えて、本事業用地が名阪国道天理東インターに至近の距離であること、また敷地も一日処理量350tを越える規模の焼却炉建設に十分な面積があることから、奈良県を通じて近隣自治体に広域化への参加意向を確認しました。結果、当初は11市町村(最終10市町村)から希望がありました。その際に天理市は、地権者が天理教であること及び賃貸借であることは明確にしていました。奈良県からは建設と50年間の運営で、広域化により約550億円が合理化されるとの試算が示されました。
その後、3月17日付の「新クリーンセンター事業についてのご説明(フライデー誌記事及び大和高田市市議会質問に対する本組合の考え方)」のとおり、組合議会及び10市町村議会においても賃借料は適切に承認され、これまで執行しています。
(参考3)
「新クリーンセンター事業についてのご説明(フライデー誌記事及び大和高田市市議会質問に対する本組合の考え方)」3.賃借料の妥当性について参照
http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/toushin20180328[2][2].html
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2.売買を巡る地元説明会における指摘
(1)「NEWSポストセブン」が報じたとおり、平成27年3月12日の地元校区区長会への説明会をはじめ、当初から地元に対して「これからしっかり地元にご説明をしていきますという前提の下ですけれども、借地と言う事で今同意をいただいています」と述べてきました。借地の方針であることは一貫して公に明らかにし、文書にも記載しています。
(2)他方で、本事業に対しては、大気・土壌・水への汚染など環境への影響、広域化による周辺交通への影響への懸念から、根強い反対の意見が各自治会への説明会で寄せられました。とりわけ、白川ダム及び周辺ため池に水利権を持つ地域では、農家や土地改良区からの反対が強く、組合では計50回以上の説明会や先進地視察などを行い、約2年をかけて懸念の払しょくに努めました。また、直下型地震の発生が懸念される大和盆地東縁断層帯の推定域に本事業用地が掛かるとの指摘もあったことから、地面を掘り地層断面を専門家が解説する現地説明会も行いました。
(3)ポスト記事が引用した説明会等の中では、本事業用地が天理教からの賃借であることに対して、反対の観点から、借地である本事業地よりも売買できる土地の方が市財政に合理的であり、山間部の市有地を活用するか、他のゴルフ場等を売買すれば良い、との指摘もありました(※ポスト記事は議事録の一部を引用しており、全体の文脈を報じていません)。これに対しては、造成や接道、運搬コスト、現施設の時間的制約等から本事業用地以外の土地では困難である旨を回答しました。賃借料については、「長い期間だと、トータルで買った方が安いです」と率直に述べています。
(参考4)「平成27年7月25日和爾町住民説明会会議録」
http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/lancelot/common_files/images/public/h270725.pdf
(4)水利権を有する自治会の一部は、白川ダム周辺の他の天理教土地の今後の開発について、同意権も持っており、天理教に白紙撤回を求める要望も行いました。組合としては、賃貸借の場合に所有者である天理教が継続して批判に晒されかねないこと、稼働後25年後には炉の入れ替えなど大規模修繕等も見込まれることから、天理教に対して、売買への変更可能性も途中で問い合わせました。
しかし、天理教としては、一部自治会から施設の永続化に繋がりかねない売買は行わないよう特に念押しがあり、ますます反発を受けるおそれがあること、また賃貸借であっても現状では契約できず、地元の理解を得るためいっそうの努力を行うよう強く要望され、売買できる状況ではありませんでした。
その後、先進地視察の実施や周辺地区環境整備のための基金創設などにより、徐々に各自治会の本事業に対する理解も進みました。その中で、50年間は我慢して容認しても、次期施設は他の地域で必ず建設すること、という要望が行われました。これに対して、本組合は「更新のない定期借地」であり、50年を超えて継続使用することは想定していないと文章でも回答することでようやく同意を得ました。
(参考5)「新ごみ焼却施設建設計画についてのお願い及び回答」
onegai.pdf (yamabe-kenhokuseibu.jp) kaitou.pdf (yamabe-kenhokuseibu.jp)
平成29年1月、地元理解の醸成に努めて下さってきた校区の役員から、将来の事業安定のために、一時的には費用が増大するが買い取って計画を進めてはどうか、との示唆もいただきました。しかし、上記のとおり50年を超えて継続しないことを担保するため「更新のない定期借地」と説明してきた経緯、また、書面での回答の中で将来の買取り可能性も残すために「契約期間内で買い取り等になった場合においても、施設については60年後には完全に撤去し原状復帰いたします」と記載したところ、地権者が売りますと言えばやはり買うのか、と改めて心配の声も出たため、必ず市外で計画すると回答した旨を説明し、売買への切り替えは現状困難であると返答しました。
これらの経緯を踏まえてまとめた地元との協議書第1条には、「次期建設候補地は、組合に参加する全10市町村の責任として、天理市以外の市町村で選定すること」と明記しました。
(参考6)「クリーンセンター建設候補地の買取りについて(要望)」
http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/lancelot/common_files/images/public/youbou.pdf
(参考7)「平成28年8月21日楢町役員説明会(4回目)会議録」
http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/lancelot/common_files/images/public/h280821.pdf
(参考8)「新ごみ処理施設建設に係る協定書」
http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/lancelot/common_files/images/public/kyouteisyo.pdf
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3.奈良県知事の指摘を受けた再交渉
令和2年末から令和3年初旬にかけて、当時の奈良県知事より突然「賃料が土地代を上回ることを懸念」と伝えてきました。
(詳細は、「新クリーンセンター事業についてのご説明(奈良県知事発言に対する補足説明)」
http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/toushin20180328[2][2][2].html参照)。
この時、県幹部より奈良モデル補助金をできるだけ継続していくために、地権者である天理教に売買の検討を再交渉する努力は行ってほしいとの依頼がありました。令和3年2月15日に、知事意向を伝達の上で売買への転換可能性を打診したところ、これまで当初から賃貸借で地権者と本組合が双方合意の上で事業が進捗してきている中、受け入れられないとの回答がありました。
本組合としては、引き続き地元及び10市町村間の信頼関係を大切にしつつ、令和7年4月の新施設の稼働に向けて粛々と事業を進めて参ります。
以上