「新クリーンセンター事業についてのご説明」

(フライデー誌記事及び大和高田市市議会質問に対する本組合の考え方)

「新クリーンセンター事業についてのご説明」

(フライデー誌記事及び大和高田市市議会質問に対する本組合の考え方)

令和5年3月17日

山辺県北西部広域環境衛生組合

管理者 並河健

 本組合を構成する県内10市町村はゴミ処理を広域化し、共同で新施設(焼却施設とリサイクル施設)を建設する事業を進めています。

 3月17日発売の週刊フライデー誌は、大和高田市議会議員の発言を引用し、焼却施設事業の用地は、地権者である天理教教会本部への利益供与を目的に、「売買価格の3倍」にのぼる不当に高額な土地の賃借料を払うために借りたものと解される記事を掲載しました。

 また、昨日の大和高田市議会一般質問でも、土地ありきで地権者/天理教側が作成した鑑定に基づき、「3倍」の賃料を払っているとの趣旨を繰り返されました。

 これらの主張は、地元自治会等との協議経過をはじめ、地元理解を最重要視してきた本組合事業の取組みや事実関係を踏まえない、誤解に満ちた「印象操作」です。以下のとおりご説明します。

http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/…/sinkurisenntagosetu…

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1.なぜ売買ではなく、更新のない定期借地契約が必要だったか

(1)本事業は、組合発足を準備していた平成27年当時、10市町村の老朽化した7施設の統合によって、建設費用で約100億円、運営費用で年間約9億円、稼働期間の50年合計では約550億円を合理化できる、と奈良県が試算した「奈良モデル」を代表する広域プロジェクトとされてきました。

(2)しかし、ごみ処理施設の建設や運営には、周辺住民の皆さまの御理解と御協力が極めて重要です。様々なご懸念に対して、説明会や先進地視察を重ね、ようやく理解が進んだ中でも最後まで地元からの「絶対条件」が残りました。

 それは、稼働から約50年後に新クリーンセンターが耐用年数を迎えた後、同じ敷地で次の施設を更新することは絶対に認められず、必ず天理市外で計画することです。「次期建設候補地は、組合に参加する10市町村全体の責任として、天理市以外の市町村で選定すること」と、地元を代表する2つの小学校区との協定書の第1条に明記されています。

(参考1)新ゴミ処理施設に係る協定書

http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/…/public/kyouteisyo.pdf

(3)地元自治会等との協議では、敷地内に永続化しないことを、法的にも担保することが求められました。準備・除却期間と耐用年数を合わせた60年間を期限とし「更新のない定期借地契約」を地権者と結びました。耐用年数を終えた半世紀後に、私も含めて組合が責任を持てるのか、なし崩しになるのではないか、と懸念を示される地元自治会や土地改良区に対して、「更新のない定期借地契約」であることを文書でも回答し、ようやく協定書の締結に至りました。

(参考2)

土地改良区への回答 

http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/…/kairyoukukaitou.pdf

櫟本町六総への回答

http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/…/rokusoukaitou.pdf

(4)それまでの過程では、事業用地周辺に水利権を有する自治会から地権者に対して、「組合に土地を売らない」ことが要望されました。地権者は、事業用地だけでなく白川ダム周辺に広大な敷地を保有しています。昭和50年代後半の開発時に、今後土地の活用に当たっては地元自治会の同意を得ること、と覚書きも結んでいたため、地元の意向を無視して本組合に土地を売却するという選択肢はありませんでした。

 組合が地元を代表する2校区と覚書きを締結できる段階になったことを、地権者の顧問弁護士が確認してようやく借地契約を結ぶことができました。

(5)こうした経緯のため、本事業用地の確保は当初から定期借地以外にはあり得ませんでした。組合発足前からこの点を奈良県及び参加市町村に明らかにした上で、本組合は発足しました。

 広域化が実現するためには、法令に基づくもの以外にも、土地に応じたルールが必要です。本組合事業では、周辺住民の生活に極力影響を与えないため、参加市町村はパッカー車から積み替え施設で10t車にゴミを載せ替え、必ず名阪国道天理東インターを経由することとしています。これは、地元の理解を得るために定めた自主ルールです。

 これと同じく、地元理解を得るための定期借地は、約550億と見積もられた広域化の効果を享受するための前提条件であり、参加市町村はこれを了解してきたはずです。

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2.事業用地の選定経緯は、「天理教の土地ありき」ではない

(1)本組合事業はゼロから始まった訳ではありません。その前に、天理市の施設老朽化への対策がありました。天理市が先ず、天理市自身の新ごみ処理施設の用地について市内で調査検討を行い、事業用地を再適地と定め確保できる見込みとなった後になって、その場所が広域化にも適した好立地であったことから、県を通じて広域化のパートナーを募りました。しかし、そもそもは広域化事業のために土地の選定を行った訳ではありません。

(2)天理市では、昭和57年に建設した現クリーンセンターの老朽化が進み、年間の修繕費用が高騰し、また平成36年前後には焼却炉の耐用年数を超えることから、早急に持続可能なごみ処理体制を確保することが課題でした。

 天理市は、現施設の敷地周辺や市内他地域を含め、継続的に用地の検討を行っていました。平成23年度には、一旦、大規模修繕による長寿命化を図る方針でしたが、平成25年に検証した結果、想定よりも大幅な増額となる試算が出ました。

 また、新設には候補地を選定した時点から、環境影響評価を含め、10年近い準備期間を要し、耐用年数を超える平成36年前後に新しい施設を稼働するためには、数年のうちに準備に着手する必要があることが明らかとなりました。長寿命化による対応は一時しのぎに過ぎないと判断し、改めて新設の可能性を検討しました。平成26年度に、過去の候補地検討の内容も踏まえた選定を行いました。

(3)焼却施設候補地選定にあたって考慮した点は以下のとおりです。

・現に、宅地や農地等の明確な用途に活用されていない点が、地権者との間で確認されている、10,000㎡以上の面積を有する土地であること。

・土地利用に関する法令(都市計画法、建築基準法、自然公園法など)の規制がクリアできる土地であること。

・現状で概ね平坦な土地であり、大規模な森林伐採や造成などが必要でないこと。

・市内及び連携自治体からの運搬において利便性があり、ごみの収集運搬に係る費用が過度に高額でなく、また道路アクセスが整備済みであって、渋滞等により地域の市民生活に与える影響が抑制される立地であること。

・土砂災害や洪水災害の危険性が他の地域に比べて低く、今後大規模な地震の揺れに見舞われる可能性が低い土地であること。

 上記の条件に照らして、天理市は①現クリーンセンターの敷地及び周辺地域、②福住校区をはじめとする高原地域、③市平坦部(収集運搬の都合上、市内の主要幹線道路である、国道169号線、24号線、市道天理王寺線、県道天理王寺線、市道田櫟本線の沿線等)で検討を行いました。時間的制約、地権者の意向、収集運搬にかかるコストなどを総合的に考慮した結果、諸条件に適う土地は現在の事業用地のみと判断しました。

 地権者は、地元自治会の理解を前提に協力姿勢でしたので、平成27年3月以降、候補地周辺の関係自治会等への説明や近隣施設への視察等を行いました。下記参考3の資料は、平成27年当時に地元説明会で使用したものです。

(参考3)平成27年11月30日作成「新ごみ処理施設の候補地選定に係る経緯について」

http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/…/public/senteikeii.pdf

(4)天理市以外の9市町村にとっては、天理市が現事業用地を定期借地により確保できる目処が概ね立った時点(平成27年)で、奈良県を通じて参加の打診が行われました。ですから、組合参加を検討する時点では、他の選択肢はなかったことになります。しかし、それを以て「天理教の土地ありき」と言うのは、天理市における検討の経緯を全く無視した議論です。

(5)また、仮に天理市内の中心部や天理東インターから離れた盆地部等が候補地であれば、天理市は、大和高田市をはじめ10市町村の広域化を受け入れることはしませんでした。

 全国的にゴミ処理広域化が困難な主要な原因の一つは、他の市町村の車両が生活道路を通ることに対する地元の拒否感です。本事業の建設工事でさえ、工事車両は必ず天理東インターを通ることを地元と約束しています。地元説明会では、天理東インター付近の角度が急なカーブを曲がりきれない大型の特殊車両のみ、台数を限定して早朝や夜間など交通に影響が少ない時間帯に天理インターを使用することを、何とかご理解いただきました。

 天理東インターから至近の距離に用地を確保できたから可能となった広域化事業であるにも関わらず、また既に造成や接道が整備された土地であることから建設予算も削減できる希有な土地であったにも関わらず、組合設立から7年、定期借地契約から6年を経た今になって、広域化参加自治体の中から疑義を呈されることは理解に苦しみます。

 参加市町村は、広域化の参加を義務づけられていた訳ではなく、条件を吟味した上で主体的に参加を判断されたと認識しています。

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3.賃料の妥当性について

(1)賃貸借契約による賃貸借料の総額と、売買価格は単純比較できるものではありません。民間の賃貸マンションでも60年間も居住すれば、より広い新築マンションの売買価格を超えるのが通常です。賃貸借料の算定根拠となる土地の評価額や利回りが、鑑定に基づき適切に行われたことが問われます。

(2)「売買価格の3倍」というのは、年間利率5%を60年かければ計算上そうなるだけです。年率2%を下回る低利でない限り、合計額は売買を当然上回ります。本件では、鑑定額を10市町村長で構成する運営協議会で確認し、次に組合議会の同意を得て、契約に沿った賃貸借料を毎年予算計上して執行してきました。

 環境省の補助金を得る上でも、売買か賃貸借かは要件の対象となっておらず、県内の他事例を含めて地元地権者から賃貸借で用地を確保している例はあります。

(3)エネルギー回収型廃棄物処理施設の事業用地の賃貸借にかかる「年率5%」の利回りは地権者側が取った鑑定であることは事実です。これに対して、組合自身が取った鑑定書では利回りは「3.5%」でした。しかし、地権者側鑑定書に記載された期待利回りの理由は、組合側の鑑定よりも詳細であり、合理性を欠くものとは思われませんでした。また、土地の基礎価格は組合が取った鑑定よりも、むしろ安価でした。(組合側:4億7,368万7千円 > 地権者側:4億5,950万円)。

(参考4)本事業用地の鑑定書 

http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/…/fudousannkannteisyo…

 (山辺・県北西部広域環境衛生組合)

http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/…/fudousannkannteisyo…

 (地権者)

(4)事業用地は、名阪国道東インターから至近の距離にある「第1種住居地域」でした(※現在は「準工業地域」に変更)。地権者側の鑑定では、評価書作成当時の取引事例、奈良市及び天理市の公有財産貸付時の利回り(4%)も参考にしつつ、定期借地期間の終了後に事業用地は「心理的嫌悪感が存する」「元ごみ処理施設跡地」となり土地の市場性が減退することによる加算(1%)も必要であるなど、利回りを5%とした理由が記載されています。

 また、事業用地はすでに地権者によって造成済みであり、公道に向けて2方向に5.3m幅の接道が整備されているなど、直ちに工事着工できる状態でした。他の事例では、山の造成や長距離の接道整備、橋の整備などに多額の費用を要するケースも少なくなく、事業にかかる予算を大幅に節約できる用地でした。

他方で、それまで駐車場として活用していた地権者にとっては、過去に造成工事や接道の整備など多額の予算を投じた用地でした。ですから、地権者は自身が依頼した鑑定書に基づく賃貸借料でなければ契約に応じられないとの立場でした。

(5)本組合としては、平成28年8月26日の組合議会全体協議会において、上記の事情をご説明の上で、地権者側の鑑定に基づく賃借料について了承を得ました。平成29年3月10日に地権者と契約を交わし、平成29年3月11日以降の賃貸借料は、平成28年7月19日に開催した平成28年度第1回臨時会で承認いただいた平成28年度予算より執行しました。

 同賃貸借料を含めた組合歳出について、ごみ量割合で按分した額を10市町村から分担金として支出いただいています。各市町村議会では、年利5%に基づく賃借料も含めた平成29年以降の分担金について、各市町村の予算審議においてご承認いただいており、令和5年の今になって突然問題視されることは理解に苦しみます。

(参考5)賃料にかかる組合予算の議決結果の詳細

・賃料に係る平成28年度予算は、組合が取った鑑定書の額「利率3.5%×9カ月分」を平成28年4月1日に専決処分し、平成28年7月19日に開催した平成28年度第1回臨時会で承認いただきました。

・しかし、地権者との交渉の中で、地権者側の鑑定書「利率5%」でなければ応じないとの立場が示されたため、平成28年8月26日の組合議会全体協議会で2つの鑑定額を記載した資料を示し、理解を得ました。

・議会でのご了承後も、地権者からは「地元説明がまだ足りていない」と指摘を受けました。その後も約半年間協議を要したために、平成29年3月10日にようやく契約を結ぶことができました。そのため、平成28年度予算では3月11日~31日分しか必要になりませんでした。

・その際、利率5%で計算し直して補正予算案を上程しなかったのは、先立つ平成29年2月21日に開催された平成29年第一回定例会において、利率5%に基づく平成29年度の賃料を予算承認いただき、議会としての理解が示されたためです。平成28年度予算は確保していた「3.5%の9か月分」から「5%の21日分」が十分賄えたため、その予算の中で執行し、その執行に対する議会のご承認は、平成29年8月22日の平成29年度第2回定例会における決算認定に含まれました。

(6)なお、地権者は平成28年8月26日の組合議会全体協議会で賃料の了承を得ても、半年以上も契約に応じませんでした。仮に「賃料目当て」であれば、すぐにでも応じるはずです。

交渉になお時間を要したのは、一部の地元自治会からの理解がまだ十分でない、と地権者側が判断したためです。地権者が、地元との信頼関係を優先し、当該用地だけでなく周辺に有する土地全体の視点で検討していたことは、この点からも明らかです。

 地権者は、本組合に事業用地を貸す判断をしたことで、当初は一部地元から批判も受けられ、また病院関係者や過去に白川地域一帯の開発に関わった組織内部からも反対にさらされました。「年利5%」の賃借料のために積極的に本事業を誘致するような状況では全くありませんでした。天理市が市民生活を支えるために不可欠な事業として再三お願いしたために、地元の一定の理解を得ることを条件に、何とかご同意いただいたのが実情です。

地権者への利益誘導のために用地を設定した等の主張は、これまで事業にご協力いただてきた地権者に対する侮辱以外の何物でもなく、名誉を毀損するものです。地権者は、引き続き周辺土地の地権者でもあり、今後の事業運営への影響すら危惧されます。

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4.「奈良モデル」補助金について

(1)本組合事業は、広域化に向けて、天理市以外の9市町村に対して奈良県が声掛けを行った時点から、賃貸借を前提に進んできています。奈良県知事が出席した平成27年度の会議資料にも、賃貸借であることが明記されています。平成28年度以降、令和4年度まで一貫して奈良モデル補助金が支出され、本事業用地での新施設建設に係る環境影響評価や地質調査など、個別具体的な事務に対して助成がなされてきています。

(2)新施設の建設予算については、10市町村が財源確保のために行った起債の償還がはじまる施設竣工の翌年度(令和8年度)に「奈良モデル」補助金は支給される予定です。補助率がソフト事業は市町村負担の1/2、建設事業は1/4と異なるため要綱は分かれています。しかし、これまでのソフト事業が補助対象として適当である以上、建設事業について不適格とされるべき理由はありません。また、建設工事が令和4年7月に開始された後に発表された「新みやこづくり戦略2023」にも、本組合事業は「奈良モデル」として掲載されています。

 万一、建設事業についての「奈良モデル」補助金が打ち切られる場合には、本事業だけでなく全ての借地上にある案件が同様に対象とされなければなりませんが、環境省の補助金も賃貸借か売買かは要件としていません。また「奈良モデル」補助金は、用地確保に係る市町村負担は対象としていません。よって、補助金の打ち切りは想定していませんが、合理的な理由なく中断される場合には、不服審査や行政訴訟も含めて本組合として対応して参ります。

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5.結び

(1)上記1.~4.のとおり、事業用地の定期借地をはじめ、本組合は組合議会及び参加市町村議会の議決を含めて、適切なプロセスを経てこれまで事業を進めて参りました。その基礎となるのは、参加10市町村間の信頼関係であり、これからも本組合は信頼関係を第一に事業を進めて参ります。

 また、今回の報道に至るまで様々なメディアからの取材を本組合が受ける中、事業用地についてだけでなく、入札に関して事業者選定にかかる専門家の協議や、10市町村長の関与など多くの点でも誤解がある質問を多々耳にしました。10市町村民の皆さまから言われなき疑義を受けることなく、本事業を進めていくために、この説明書の参考資料に加えて、事業者選定委員会や10市町村長で構成する運営協議会の議事録など、まとめて本組合のホームページにて公開いたしました。

http://www.yamabe-kenhokuseibu.jp/toushin20180328[2].html

(2)参加10市町村の議員各位におかれては、各市町村民のご負託を受けられた代表として、その利益を最大化させるためにご尽力されることは使命と存じます。この説明書について、ご疑問が残る場合には、いつでも管理者を含め本組合にお問い合わせください。また、各市町村議会がご判断されれば、参考人招致等にも応じます。

(以上)

【本件問い合わせ先】

山辺・県北西部広域環境衛生組合事務局

川口・山下

TEL:0743-63-1001(内線331・385)

すべてのリアクション:

161榊 淨子、Hiloco Okumura、他159人

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