令和6年度施政方針「人口減少社会適応宣言」

令和6年第1回 天理市議会定例会 施政方針

◆ はじめに
(能登半島地震への対応)
先ず「令和6年能登半島地震」によりお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された全ての皆さまに心からお見舞い申し上げます。
本市が参加する奈良県広域消防組合は、緊急消防援助隊の奈良県大隊の中核として輪島市での救援活動に従事し、天理署からも計29名が貢献下さいました。また市議会のご理解を得て、二次避難先として市営住宅5戸の提供を表明し、一家族に対し生活必需品の支援を行いました。
被災地支援では能登町への応急給水活動を行った他、3月8日からは水道管路の応急復旧作業に職員を派遣する予定です。また、奈良県の支援先に選定された穴水町に対し、建物被害認定や避難所運営のため市職員3名を派遣しました。多くの市内団体及び市民から義援金約250万円をお寄せいただき、重ねて御礼申し上げます。

被災地の復旧復興のため、本市としても奈良県及び県内市町村と連携し引き続きできる限りの支援を行って参ります。地震や豪雨災害などが頻発する昨今、決して他人事と捉えず、いざという時に市民の命と暮らしを守る備えを高めなければなりません。能登半島地震では、高齢化が進む地域において万単位の避難者の受け入れが必要となりました。助かる命が災害関連死により失われることがないよう、大規模な避難所運営や物資の確保、災害弱者への対応、消防警察・自衛隊などの受援、民間事業者等との協働など、初動から円滑に実施するための準備を令和6年度の課題として集中的に取り組みます。

(「人口減少社会適応都市宣言」)
地方都市の持続可能性は、有事だけでなく平時においても少子高齢化と人口減少の急速な進展という重大な危機に直面しています。多くの市町村が子育て施策の充実や企業誘致などにより、転出を抑え転入の増加を図っています。しかし、日本社会全体として山梨県や福井県の人口に相当する約80万人が昨年1年間で減少しました。社会増減ばかりを強調しても、単に人口が国内で水平に移動するだけでは課題解決とは言えません。

加えて福祉等のサービス充実による市町村間の競争には弊害もあります。地方交付税や起債の算定根拠となる地方財政計画では、全国の自治体が支出する投資的経費は平成9年度の31兆円から令和6年度12兆円へと6割以上減少しています。反対に、福祉等の経費は平成元年度12兆円から令和6年度は3.6倍の約44兆円に激増しました。
高齢化の進展と少子化対策のため福祉関連経費は更に増加すると見込まれ、すでに圧迫されている投資的経費が更に減少すれば、老朽化する施設や道路等の安全確保も困難にならざるを得ません。
人口の「取り合い合戦」に終始すれば、本市を含め多くの市町村が経常経費の高騰で行き詰まることが懸念されます。

少子化の現状は深刻です。2023年の我が国の出生数は統計上過去最少の75万8千人でした。本市の2023年の出生数は、人口規模を勘案すれば全国水準とほぼ同じ371名でした。大きく落ち込んだ2022年の382名から更に減少し、10年前の約7割に留まります。1年371名が平均値となる時代には、仮に90年を掛け算しても約3万3千人となり本市の人口は半減します。ただし、現在50歳前後の団塊ジュニアの世代の皆さんが高齢者となる今後20~30年間、高齢者人口はほぼ維持されます。その反面、生産年齢人口は大きく減少します。
本市の人口は現在約6万1千名ですので、ピークの7万4千人と比較すれば減っていても、それほど極端な影響はまだ及んでいないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、昨年生まれた371名が就学する5年後には、本市小学校の生徒数は平成元年の4千百名から4割減の2千3百名となり、令和10年代には2千名を下回ることが見込まれます。今後20年間で市内の大半の学校をはじめ施設が耐用年数を迎える中、同じ体制と手法で市民サービスを提供していくことは不可能と言わざるを得ません。

子育て世帯の経済的な負担を軽減し、少子化を緩やかにする努力は本市としても重要だと考えています。来年度は子ども医療費助成の拡充により、未就学児の医療費を無償化する他、国基準で半額助成を受けている第二子以降の保育料の無償化、民間保育所の処遇改善などに取り組みます。ただし、児童手当の拡充にかかる市負担も合わせれば、今後は約1億3千万円規模で経常経費の増加を伴うことも事実です。
少子化をもたらす大きな要因は、合計特殊出生率の算定対象となる女性が減少する「少母化」です。10年後には、15歳~49歳の女性の数は転入と転出がゼロと仮定しても約1,200名減少します。そのため、出生率が相当程度上昇したとしても出生数の減少は継続します。我が国において2030年代以降に少子化に拍車がかかることが懸念されているのは、すでに生まれている女性数から少母化が避けがたい現実であるためです。

本市はこの数年、京阪神都市部への通勤が遠いことに加えて、市内で最大規模だった宗教法人の雇用数の減少も重なり転出超過の状況が続いてきました。これに少子高齢化と自然減を合わせて、今後いっそうの人口減少は残念ながら継続するでしょう。もちろん市民サービスの充実や活性化を通じて、できるだけ抑制する努力は尽くします。同時に、人口減少を厳然とした事実として正面から受けとめ、その上で、暮らしを支える行政サービスを持続可能なものにしていくことが私たちの使命です。

そのためには、意味のある変異をもたらさなければなりません。行政の内部あるいは様々なパートナーとの関係において「当たり前」だった役割のあり方も根本から見直し、政策間連携の連鎖の中で多様な価値を生んでいく必要があります。人口減少社会に適応した町にいち早くなること。それこそが厳しい変化の中で、住み慣れた地域で暮らし続けられる町として天理市が生き残ることに結果的につながると確信しています。令和6年度は改めてそのスタートと位置づけ、「人口減少社会適応都市」としての施策を以下ご説明します。

公共施設の老朽化と少子化という課題に対して、奈良県内を含めて多くの自治体では学校の統廃合が進んでいます。全く否定する趣旨ではありませんが、地域の特性を活かした教育や地域コミュニティのあり方などを合わせて考えることが重要です。特に本市における小学校区は、子ども達の通学範囲であるだけでなく、地域で重要な役割を果たしていただいている各種団体が構成されコミュニティの核となっています。

統廃合により学級数などの規模を保ち、施設の維持管理経費を合理化する利点はあります。しかし、学びのあり方自体に新たな付加価値が生まれなければ、これまで地域で一緒に育んできた天理らしい学びから地域との距離が拡がり、通学が遠くなるだけになる怖れもあります。校区を単位として育まれてきた顔が見える関係は、災害時などに支え合う共助の上でも重要だと考えます。

そこで天理市はできる限り地域の学校を守りつつ、学校に公民館をはじめ周辺の公共施設の機能を合わせて「地域連携型小規模校」として発展させていく「みんなの学校プロジェクト」をより大胆に進めて参ります。また令和6年度より「学校三部制」を全ての校区で全面的に導入し、学校における働き方改革と地域連携の両立を図ります。

学校三部制とは東京都の三鷹市においても先行的に導入されている考え方です。従来の授業時間帯における教育を「一部」、学童保育やアフタースクールなど課業外の学びを「二部」、学校内におけるその他の地域活動などを「三部」と位置づけます。奈良県が令和8年度の実施を表明した週末のクラブ活動の地域移行後は、「二部」の中に入ることになります。
それぞれの部は縦割りではありません。例えば「三部」の子ども食堂で朝食を摂り、生活リズムを整えた子ども達がそのまま「一部」の授業に参加して、不登校対策につなぐ取組みが三鷹市において実施されています。柳本公民館では「柳本こどもあさごはん部」が毎月活動されており、本市でもすでに種は蒔かれています。

学校三部制で明確にしたい最初の狙いは、学校現場の役割と責任を「一部」に限定し、先生方が課業内で子ども達に向き合うことに集中できる環境を整えることです。「二部」と「三部」を学校内で実施するに当たり、学校施設の管理責任も教育委員会が集中して負うことで、学校現場から外すよう規則も改正します。

教育現場の疲弊はすでに限界を超えています。今年度だけで退職した教員は6名、心身のストレスにより病休中の教員は8名に達しました。過剰な責任を負いかねて管理職試験を受ける教員が激減し、市内で校長教頭の人材を確保できない事態にまで陥っています。

これまでに教員の負担軽減のため公務支援システムや給食公会計化の導入などを行いましたが、根本的な解決になっているとは言えません。クラブ活動の地域移行も、中学校での各論に留まります。本市が今年実施した教職員と保育士を対象にした一斉アンケートでは、保護者対応に負担を感じる人が約8割、最近に理不尽な言動を受けたと感じる人が約4割、病欠以上のダメージを負った人が4人に1人という悲惨な状況が明らかになりました。
いじめの重大事案として総合教育会議で審議した事例では、保護者からの圧迫に萎縮した教師が生徒に適切な指導を行えず、事態を悪化させていました。他の不登校事例では学校が夜間まで家庭訪問を続けたものの、福祉部門との連携が不十分で児童の現状把握すらできていませんでした。

令和6年4月より本市は、子育て応援・相談センター「ほっとステーション」を開設し、全ての公立学校園所、学童保育所に対する保護者からの改善の要望や相談を一元的に対応します。「ほっとステーション」では校園所長OBOGや心理士がチームとなって窓口役を務め、学校・園所の現場、教育委員会及び福祉部門が一体となって解決を図ります。教職員等は日常の連絡事項や、児童生徒について家庭の協力を得て取り組むべきことについて保護者との連絡を継続しますが、保護者側からの苦情・要求には直接応対しません。これにより先生方の精神的時間的な余裕を確保し、保護者の声の大きさではなく、子ども達の実情に応じてきめ細かく対応することに集中していただきます。

文部科学省も令和6年度事業として「⾏政による学校問題解決のための⽀援体制の構築に向けたモデル事業」を計画しています。本市のほっとステーションは問題意識を完全に共有しながら、全国的にも最も抜本的な課題解決を目指したチャレンジであると考えています。

昨年12月に構想を発表して以来、前述のいじめ事案や不登校事案をパイロット事業として学校現場の対応から準備チームの対応に切替えました。第三者や心理士が対応することで保護者とのやりとりも冷静かつ前向きなものとなり、先生方の負担を劇的に軽減しつつ、生徒同士の対立の緩和や児童の登校再開など成果を挙げています。
教職員の守備範囲を「一部」に集中した上で、「二部」、「三部」を学校内で完全に実施するための地域連携型小規模校の建築構想を令和6年度に作成します。山の辺小学校と柳本小学校の一部校舎がまもなく60年の耐用年数を迎えます。文部科学省も他施設との複合化・共用化・集約化を行う学校建設について補助率の上乗せを行っています。
少子化と厳しい財政事情の下、両校を統廃合ではなく更新していくためには、周辺公民館等と機能を統合する他ありません。

そして特別教室や放課後の普通教室を含めて、多世代の絆づくりの場、居場所とします。櫟本校区で育まれてきた「夢応援プロジェクト」は、学校教育と生涯学習・社会学習が連携し学び合うことで、子どもたちの学びが豊かになり、高齢者をはじめ地域の皆さんが元気になることを実証してきました。千葉大学の研究では全国の市町村間で認知症リスクが4倍の格差があることが明らかになっており、「なりにくいまち」では小中学区相当の地域に通いの場やスポーツ趣味などの社会参加の機会があることが重要な要素であると指摘されています。世界保健機関は、個人を取り巻く地域社会環境の整備を「ゼロ次予防」と定義しており、本市の「みんなの学校プロジェクト」はまさにこの
天理市版ゼロ次予防の核になると考えます。

これから更新が必要になる各校は、計画当初から「みんなの学校プロジェクト」を前提に地域と共に創ります。令和6年度は最初のモデルを山の辺と柳本両校で構想を策定します。また全小学校において学校内の安全確保と地域連携を両立するために電子錠を設置します。地域での活動実績をきちんと確認した利用者に対して、事前に登録した時間に限り入校できるカードキーを配布し、従来の閉鎖的に運用される学校よりもセキュリティを強化します。

投資的経費が限定されていく中で、学校を地域コミュニティの核としてお互いの顔が見える関係を再構築することは、災害時の避難所運営においても重要です。令和6年度は学校全体を活用した「みんなの避難所」のイメージも市民に共有し、迅速な立ち上げの準備を進めます。

現在の小学校区はおおむね児童が歩ける範囲であり、市内で平時・有事の拠点をきめ細かく守ることには大きな意義があると考えています。
ただし高齢化が進む中、免許を返納された方が日常生活を営むためには、買物や通院をはじめ移動手段を確保することが不可欠です。本市はこれまで駅やバス停から遠隔の交通空白地域に対してコミュニティバス及びデマンド型乗合タクシーを運行してきました。しかし、運行本数の少なさ、
固定的なルートによる目的地までの所要時間、前日までの予約等の課題があり、これだけで生活を支えるには予算を大幅に増加したとしても限界があります。

そこで、本市は奈良トヨタと「移動支援による地域活性化を推進するための協定」を締結しました。AIを活用した新たなデマンド交通サービス「チョイソコてんり」の実証運行を共同で行った結果、約9割の利用者が「本格運行を希望する」と回答され、天理市地域公共交通活性化協議会はチョイソコへの全面切り替えを決定しました。各校区から要望があった地点に停留所を増設し土日も運行する体制を整えた上で、本年4月から新たな乗り合いの地域交通としてサービスを開始します。

地域や民間ビジネスと連携した活性化では、天理駅前広場コフフンの一部を天理大学とアウトドアメーカー・モンベルと共同で観光と農業の人材育成の場にリニューアルします。平成29年の開業以来、コフフンは多世代交流や文化・芸術、スポーツ等の発信拠点として多くの市民に活用され、コロナ禍から社会経済活動が回復した本年は5月以来約340件のイベントが開催されました。秋には、駅前に東横INNがオープンし、市内の宿泊客室数は平成30年以来、約5倍の約600室に増加しました。

令和6年度は団体待合室等を引き続き市民の憩いの場として開放しつつ、天理大学のサテライト・キャンパスとしても位置づけます。観光や農業のビジネス展開について単位を取得できる講義を行い、履修者が観光案内拠点を運営し、アウトドアショップやカフェでインターンを行い実践的な育成プログラムを実施します。講義にはボランティアガイド等で活躍されている市民の学び直し・リカレントも受け入れます。

本通りから天理教教会本部、大学、石上神宮、山の辺の道への続くエリアにおいて、産官学と市民が一体となって新たな魅力を創造しながら、国内最大手のアウトドアブランドと大学の付加価値を高めます。本市にとって若年人口を集め、町の活力を産み出す上で、天理大学は創生以来重要な役割を果たしてきました。少子化により多くの大学が定員割れとなって今後の大学再編も政府が議論せざるを得ない状況の下、学生にとって魅力ある大学を共に創って人員を確保し、地方で就業する選択肢を示し機会を創出することは、大学の将来だけでなく町の未来にとっても大きな意義を持ちます。令和6年度は本市と天理大学の連携が新たなステージに入る年になります。
人口減少とりわけ生産年齢人口の減少に対して地域コミュニティの活力を守り、絆を深めるためには、多様性を尊重し誰もが自分らしく生活でき、活躍できる地域づくりが重要です。性的指向及び性自認に関わらずパートナーと生きることを地域社会として尊重するため、天理市は令和3年度から「パートナーシップ宣誓制度」を実施してきました。

「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が成立したことも受け、今議会に「天理市性の多様性の尊重に関する条例」案を上程します。これまで要綱で運用してきたパートナーシップ宣誓制度を条例化するとともに、近親者を家族として尊重し協力し合うことを宣誓するファミリーシップ宣誓制度も定めます。

性差が固定的に表れる小中学校の制服についても、性別を問わずズボンやスカート、リボンの着用などを選択できる運用を令和6年度に開始します。あらゆる人が自分らしく社会に参画できる人権尊重の町づくりを一層進めて参ります。

これまでご説明した事業は新たな試みですが、いずれも本市予算や体制を大幅に増やすものではありません。限られた財源と人員を基に、従来の行政のあり方や役割分担を再定義し、予算を組み替えたものです。老朽化した施設を全て維持更新することは不可能ですが、単なる統廃合ではなく、そこで出合う人達や先端技術との化学反応から、より豊かできめ細かい空間とサービスを生み出すことを目指します。

我が国において人口が減少していくことは今しばらく避けられません。その厳然とした事実に対し、従来の思考で抗うのではなく、しなやかに適応していく。人の数はある程度減少しても、天理で生まれ育つことの価値を共有し、住み慣れた地域で暮らし続けられる町に変容させていく。諸先達の努力により発展してきた天理市が、市制70周年を迎えるに当たって「人口減少社会適応都市」として新境地を拓く年が令和6年度なのです。

==持続可能な財政運営を目指して==
(国のR6年予算基本方針)
令和6年度の国の一般会計予算案は、2年連続で110兆円を超えて過去2番目の規模となりました。地方財政対策の歳入では普通交付税の交付団体ベースによる一般財源総額として、令和5年度を上回る62兆7180億円が確保されています。前年度と比較し、地方交付税は1.7%の増、地方特例交付金等は421.9%の増となる一方、地方税は0.3%の減、臨時財政対策債は54.3%の減です。

(本市のR6年財政状況)
本市の令和6年度財政状況についてご説明します。一般会計の歳入は令和5年度の決算見込み等により市税は増額を見込んでいます。臨時財政対策債を含む地方交付税及び地方消費税交付金等は減額見込です。天理教の寄付金は、かつての年間15億円規模から徐々に減少しています。コロナ禍の影響から帰参者数は若干回復も見られるものの、前年度と同額の2億円を見込んでいます。

歳出は、新クリーンセンターの建設工事がいよいよ佳境を迎えるため環境衛生組合への分担金が大幅に増加し、加えて天理市清掃管理事務所の建設や櫟本北こども園の工事費が増加します。子育て支援策の充実による関連経費の増加や、退職手当や人事院勧告等による職員人件費が増加する一方、生活保護扶助事業やマイナンバーカード交付事業は減額となります。

令和6年度の予算編成開始時には15~16億の財源不足が見込まれていたにも関わらず、更に約7,000万円の子育て支援策が増額となりました。財政構造改革実現までの臨時の1年と位置づけ、緊急性のあるインフラ整備や最重点施策以外は骨格並み予算として予算編成を行い、何とか予算を組めたのが実情です。国・県支出金の活用や起債等による財源の確保をしていますが、人件費や建設工事に伴う一般財源の持ち出しが大きい中で、財政調整基金の取り崩しは極力抑えたものの昨年度4.1億円の約2.5倍の10.3億円程度になりました。

令和6年は、新クリーンセンターの建設や住民情報システムの標準化等の特殊要因があるとは言え、令和7年以降も8億円規模の財源不足が続くと見込まれます。今後、耐用年数を迎える小学校の建替えをはじめ老朽化する公共施設の整備には公債費の増加を含め多額の費用が必要となります。財政調整基金は、令和5年度決算時に一定の積戻しがあったとしても今年度末の約31億円から来年度末には25億円程度に減少すると見込んでいます。一度増額した子育て支援策は不可逆的です。令和7年度以降も年度末の基金残高が毎年3億円程度目減りする場合には、7~8年で予算編成が困難に陥ります。南海トラフ地震なども懸念される中、緊急時に機動的に支出できる財源を残していくためにも、令和6年度中に人件費をはじめ経常的な支出をあと3億円規模でスリム化する努力が不可欠です。

◆予算の全体像(フレーム)
このような認識の下、議案第6号、令和6年度天理市一般会計予算(案)についてご説明申し上げます。

一般会計の予算額は、歳入歳出とも326億1千万円、前年度比で59億円、22.1%の増加です。令和7年4月に完成予定の新クリーンセンターの建設費負担金を約60億円計上していることから過去最大の予算規模となりました。

◆歳入
歳入からご説明します。市税では個人市民税及び法人市民税が増加し、前年度当初予算より1億4100万円、4.9%の増額を見込んでいます。固定資産税は、評価替えの影響により4400万円減少するものの市税総額は77億2,400万円、前年度比1億1,000万円、1.5%の増収となる見込みです。

地方消費税交付金は、前年度比1億3,100万円、8.4%の減収の14億3,300万円となる見込みです。地方交付税は、前年度とほぼ横ばいの62億400万円、前年度比900万円、0.1%の増収となる見込みですが、臨時財政対策債が前年度比9,700万円、63.1%減の5,700万円となり、実質の地方交付税は、前年度比8,800万円減少します。

国庫支出金は、生活保護負担金等が減少する一方で、デジタル基盤改革支援補助金や児童手当負担金が増加するため、前年度比2億6,300万円、6.7%の増の41億6,900万円となる見込みです。

市債発行額は、新クリーンセンター及び天理市清掃管理事務所建設工事、櫟本北こども園建設工事等による増加により前年度比48億6,500万円、219.2%増の70億8,400万円となる見込みです。
道路等の整備や学校関連施設などの公共工事には、引き続き市民の命と安全・安心を確保するために緊急性のある優先すべきものを十分精査し、国の経済対策等を踏まえ、国庫補助金の活用や償還時に地方交付税措置等のある有利な起債の利用に努めます。

令和6年度末の一般会計における市債残高は、279億7,100万円となり、過去に借り入れた市債の償還元金を差し引きすると、前年度に比べて48億9,200万円と大幅に増加する見込みです。大きな要因としては先に述べました新クリーンセンターの建設分担金や天理市清掃管理事務所建設工事、櫟本北こども園建設工事に対する多額の建設事業債が増加したためです。今後、老朽化したインフラ整備や公共施設の改修を全て更新することは不可能であり、ファシリティマネジメントを加速させ、公共施設の在り方自体を根本から見直すことで、新たに発行する市債の抑制を図る必要があります。

令和6年度の市債元利償還金は、臨時財政対策債を含め約22億6,900万円ですが、このうち55%程度は普通地方交付税の基準財政需要額として算定されます。基金は財政調整基金の他に減債基金から7,700万円、公共施設整備基金から1億円を取り崩しており、総額では約12億円を財源不足に充てた形です。

◆歳出
次に、歳出について申し上げます。
目的別では歳出全体の38.9%を占める民生費は、126億9,900万円で、前年度比7億1,300万円、5.9%の増加となります。櫟本北こども園建設工事費の増加や児童手当の拡充等子育て支援策強化による増加がある一方、生活保護扶助事業は減少しました。
衛生費は83億3,200万円で、前年度比49億3,700万円、145.4%の増です。新クリーンセンター建設に伴う山辺・県北西部広域環境衛生組合分担金の増加、天理市清掃管理事務所建設工事費が増加する一方、山辺広域一般廃棄物第2最終処分地閉鎖工事費は不要となります。

総務費は30億6,600万円で住民情報システムの標準化への移行に係る業務委託料等の増加により、前年度比2億5,000万円、8.9%の増となります。

教育費は23億3,600万円で、各小中学校の改修工事費等の増加により、前年度比1億8,000万円、8.3%の増となりました。

人件費については、制度改正により令和6年度から会計年度任用職員についても勤勉手当の支給が開始されることや、人事院勧告を受けたベースアップ等により、前年度比3億3,700万円、6.5%の増となりました。
以上が歳入歳出予算の全体像です。

続いて、「人口減少社会適応都市」を目指した令和6年度予算案の5つの重点項目に沿って主な施策についてご説明します。

第一の柱は「地域と共に、一人ひとりの豊かな未来を育む教育・子育ての充実」です。

冒頭でご説明した学校三部制の導入による「みんなの学校プロジェクト」の更なる推進では、先ず「一部」において、本市の児童生徒の学力課題である「文章や資料を読み取る力」と「自分の考えを表現する力」の育成を目指します。令和4年度から読売新聞教育ネットワークが作成したワークシートを活用して読む力と書く力の強化に努めてきました。市立図書館においても読み聞かせや電子図書の活用を通じて、児童生徒や未就学児の読書意欲向上に取り組んでいます。読む活動、話し合う活動、考えたことを書く活動を市全体で積極的に進めることが重要であり、多様なテーマ設定や地域人材の参画により天理らしい教育の充実を図ります。

持続可能な開発目標「SDGs」は未来を担う子ども達にとって必ず学ぶべきテーマです。「天理市教育政策特別顧問」で俳優の加藤雅也さんの協力の下、サスティナブルアートの第一人者である吉田ときお氏の指導を得て令和5年度は「わたしたちの未来を考える作品展」を開催し、廃棄物や海洋ゴミを活かしたアート作品をはじめ各学校でのSDGsの取組みを発表しました。給食残渣の堆肥化や空き缶、ペットボトルキャップ、インクカートリッジ等を地域とともに集めるイチカステーション、里山の保全やユニクロと連携した古着による途上国支援など、多様な活動を子ども達自身の言葉や作品で表現されていました。

学校教育と生涯学習、社会教育の融合では、俳句や郷土史の学習、習字、茶道などを共に学ぶ授業が進んでいます。保護者や教師以外の大人と触れ合う機会が減少している社会において、児童生徒にとって学びが深まるだけでなく、高齢者をはじめ地域の皆さんにとっての生きがいの創出にもなります。令和6年度は授業との共同実施や、アフタースクールとして児童生徒を受け入れて学校内で実施する公民館講座の数を増やします。

近年、不登校、貧困、虐待、ヤングケアラーなどが増加し、その内容も複雑化しています。そもそも学校だけでは解決できない課題を抱え込んで教育現場は疲弊してきました。令和6年度からは「ほっとステーション」が保護者・家庭対応に一元的に対応し、教育委員会と福祉部局をはじめ行政がチームとなって解決を図ります。
奈良県が市町村への支援を打ち出した教員業務支援員の配置は継続しますが、そもそも給食費や修学旅行費等の未収金対策等に教職員が忙殺される状況を改善する必要があります。先生方は「一部」の授業で子ども達に向き合うことに特化し、事務手続きは教育委員会等が担います。
就学前についても同様に健康・こども家庭局が事務をまとめます。

課題解決に当たって地域の力を得ることも重要です。これまでも各校区でコーディネーターが中心となり、ボランティアが登下校の見守り活動、図書室環境整備活動、花植え、読み聞かせなどの活動を通じて子どもたちと触れあい、教職員との交流も深めて下さいました。「学校運営協議会」は年間の抽象的な目標や行事について議論するだけでなく、子どもたちを取り巻く課題の共有や、「地域の子は地域で育てる」ための実践的な取組みを行うチームとしていきます。

各校では不登校・いじめの未然防止のため、年2回のいじめアンケートの実施やいじめ問題対策委員会、不登校支援委員会を実施してきました。しかし、保護者が介入して複雑化するケースが少なくなく、萎縮した教師が本当に子ども達に必要な指導ができない現実があります。あるいは、児童生徒より前に教師の心が折れて病欠になっています。

「ほっとステーション」を教育総合センターに開設することは、同センターの抜本的な役割の見直しと強化もねらったものです。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーは、希望者に対応する「待ち」の姿勢ではなく、児童生徒が抱える背景や行動の動機を把握した上で専門的な視点から学校現場とともに解決策を考えていきます。
また「ほっとステーション」は相談を受けた保護者の不安に寄り添い、「何が本当に子どものために解決すべきことか?」を共に考え、保護者自身の心理に支えが必要な場合には早期のカウンセリングを行います。

情報端末を活用した遠隔授業により、在宅中や別室登校中の児童生徒の学習機会を補償する取組みや、「ゆうフレンド派遣事業」は継続し、児童生徒が無理のないペースで学校とつながり続けられることを最優先にします。令和4年度の文部科学省調査では、全国の不登校児童生徒は約29万人で増加の一途をたどっています。天理市も例外ではありません。その中で地域の方との交流を通じて登校できるようになった事例があります。母親の同校なしで通学できなかった児童が、地域の方と途中から一緒に通うようになり、徐々に上級生と登校できるようになりました。今の教育課題を学校だけで解決できるという考えは捨てなければなりません。「みんなの学校プロジェクト」を通じて、地域のみんなで子どもを育むしくみづくりを行うことが、不登校対策でも重要です。
天理らしい学びの充実では、「国際性」も重要な要素となります。姉妹都市である韓国瑞山市とは中学生派遣交流事業を実施してきましたが、日韓関係の複雑化により3年間
中断せざるを得ませんでした。しかし7月に私と教育長が瑞山市を訪問し、「グローバル人材育成のための国際交流事業業務協約」を李市長と締結し、10月から11月にかけて瑞山市の10中学校から515名の中学生を迎えて各中学校で交流事業を行いました。令和6年度は、交流の意義に共感下さった平川商事からの「企業版ふるさと納税」を原資として市内中学校の代表者14名を夏頃に使節団として派遣します。参加学生を中心に先方中学生の受け入れも継続します。

また、国際協力機構(JICA)と天理大学と本市の三者協定に基づき、朝和小学校がエジプトの小学校とオンラインで交流を行っています。お互いの国の違いを理解し合うことで豊かな広い視野と自分の言葉で伝わることの喜びを大切にした教育を推進します。

生産年齢人口の減少により、今後我が国においても外国人人材の活躍が拡がってくると予想されます。一方で円安の影響や日本経済力の相対的な低下により、留学や海外旅行などの機会は少なくなることも懸念されます。そうした時代に、天理の子ども達が偏見や対立ではなく、国籍に関係なく人と人として互いを尊重し向き合うことができる人間に成長できるよう、国際交流の機会を増やしていく考えです。
学校三部制の「二部」の学童保育所では、本市は先進的に学校施設の全面活用を進めることで、全国で待機児童数が増加する中、待機者を出さずに受け入れ規模を創設当初の2倍以上に拡げてきました。いわゆる空き教室に留まらず図書室や特別教室を利用することで改修費用を大幅に合理化し、児童にとっては「一部」からつなぎ目なく放課後の居場所に移行することができています。学校内での併設は、教職員と学童指導員の距離を近づけ、児童や家庭についての情報共有が密になる効果も生んできました。令和6年度はこれまで学童が無かった福住小中学校でも図書室に学童を新設し、計18学童で920名を受け入れる予定です。

中学校の部活地域移行は、奈良県が令和8年度の完全実施の方針を打ち出しており、準備を加速する必要があります。令和5年度は、実証事業として試行的に市内中学校の5つの部活動で取組を行いました。令和6年度は、週末の部活そのもののあり方を検証し、指導者の「人材バンク」の整備などを行い、令和7年度には相当数を実際に移行できる体制を目指します。

こども家庭庁は、児童と家庭が抱える多様な課題に応じて、生活習慣や学習のサポート、食事の提供などを行う「子どもの居場所支援」を推奨しています。
本市ではこれまで市民有志により「宿題カフェ」などが運営されてきました。令和6年度は、旧天理市御経野老人憩の家を利活用して、学校や家庭以外にいつでも安心して過ごすことができる「子どもの居場所づくり」を(一社)天理文化の会が実施する予定です。隣接する御経野児童館の体育館やグランドも積極的に活用して参ります。

市内子ども食堂は、各校区の公民館を活用した自治会主体の活動の他、民間有志による実施を含め社会福祉協議会と連携して活動する団体が計17箇所に拡がってきました。
コロナ禍の制限から配食に加えて会食形式での再開が進み、子育ての悩み相談、多世代の交流、生理衛生用品や食品の提供など多様な支え合いの活動も行われています。
令和5年度は物価高騰対策として1団体につき10万円の給付金を支給し、地元消費を福祉活動に繋げる「イチカプラス」事業を通じて約23万円の寄付を提供しました。

令和4年に発足した民間任意団体の「フードバンク天理」とは、設立当初から協働してきました。当該団体では、余剰食品の一般寄付の受付のみならず、防災食の入替時や台風で不要となった給食等をも受け入れており、集められた食品はこども食堂や必要とする世帯等に届けられています。令和5年度は、国が定める10月30日のフードロス削減の日に合わせ、庁舎市民ホールや市内公民館等で「市内一斉フードドライブ週間」として共同事業を実施し、期間中に600㎏を超える食材が集まりました。

また「ひとり親家庭への支援に関する協定」を締結している「おてらおやつクラブ」は、支援家庭への外食機会の提供、天理市内農家から購入したお米を「おすそわけ」に同梱するなど天理独自の取組を拡げています。原資はふるさと納税の「ガバメントクラウドファンディング」の仕組みを活用し、令和5年度は約800万円の寄付が全国から集まりました。

子育て家庭の孤独孤立対策では、令和5年度は産後ケアを専門とする助産院が市内で開業しました。生後12か月未満に対象者を拡大し、利用料の減免対象者も拡げることで利用促進を図っており、令和6年度は委託料を増額し質の向上に努めます。また産後の母親の心身の安定や身体の回復、育児方法などサポートする天理市ドゥーラは認知度が徐々に向上しリピーターも増加しています。令和6年度は、寄り添い型母子支援を強化するためドゥーラの増員を図ります。

子ども達が遊ぶ中で相談事業や育児講座、託児サービスを行っている「はぐ~る」では、令和6年度に児童福祉法に基づく「こども家庭センター」の機能を拡充します。全国的な児童虐待相談対応件数の増加を踏まえ、母子保健と育児支援や虐待防止を担当する保健師、保育士、家庭支援員等がチームとなり専門的支援を行います。支援を必要とする妊産婦や子育て世帯に対して支援メニューの体系的なマネジメントを行う「サポートプラン」を作成します。

子育ての情報提供を継続的に行う伴走型支援と経済的支援を一体として実施する政府の「出産・子育て応援交付金事業」への対応では、令和6年度はコンシェルジュによる相談・面談体制を充実させ、本市独自にデジタル地域通貨「イチカ」の選択者への上乗せも継続します。

出産を希望しても子どもを授からないご家庭も少なくありません。不妊治療は大部分が保険適用となったものの長期の治療が必要となることも多く、令和6年度も自己負担額の一部助成を継続します。

少子化や孤独孤立の対策では、結婚やパートナーづくりを支援することも重要です。本市はNPO法人日本結婚教育協会(ジェメカ)と協働し、婚活の相談や支援を行うボランティア人材「ハロパトメンター」の育成に努めています。市内イベントと連携した婚活事業やカップル成立後のフォローアップ、「少母化」対策として女性の就労促進など、市内事業者や天理大学との協力も進んでいます。引き続き、家庭の形成から出産、産後のケアまでライフステージに応じた切れ目のない支援を行います。
就学前教育と保育の充実では、令和6年度も定義上の待機児童数ゼロを継続する見通しで、やまだこども園を除いた盆地の何れかの施設には保育の受け皿がある状態を保ちます。幼稚園の児童数が減少する中、本市では地域との触れ合いを維持しながら幼保の一元化を推進しています。令和7年4月に北保育所と櫟本幼稚園を統合し、「櫟本北こども園」を新たに開園します。今後は他の校区においても、こども園化や複数園の一元管理など持続可能な体制への転換を図り、令和7年度から5年間を対象とする「第3期天理市子ども・子育て支援事業計画」にも反映させていきます。また「天理メディカルイースト内」に開設された病児・病後児保育も現在26名の登録をいただいており、いっそうの活用促進を図ります。

多子世帯の経済的負担の軽減策では、2人以上のお子さんが保育所等に同時に入所している場合の第2子目の保育料を令和6年度から無償化します。また市内の私立保育園でも保育士の確保が困難となり、受け入れ枠を制限している施設があります。本市では常勤保育士に対して月額3,500円の補助を行ってきましたが、奈良県が「保育士処遇改善事業」を打ち出したことを受けて、令和6年度は月額2万円に補助額を拡大し人材の確保定着を支援します。

その他の子育て世帯に対する支援としては、政府が掲げる児童手当及び児童扶養手当の拡充事業を着実に実施します。また令和6年8月より子ども医療費等福祉医療補助を拡充します。受診料を各家庭がいったん立て替える自動償還方式から現物給付に切り替えるとともに、市独自の施策として未就学児については自己負担分を無償化します。

第二の柱は「誰もが地域で安心して健やかに暮らせる福祉の充実」です。

我が国では令和7年にいわゆる「団塊の世代」が75歳を迎え、令和22年には85歳以上人口の急増が見込まれます。AIデマンド交通「チョイソコ」の本格運用による移動支援に加えて、地域住民の互助意識を高め、高齢者がいつまでも住み慣れた地域で生活できるまちづくりを推進します。

移動販売による買物弱者支援は、ならコープ及びセブンイレブン・ジャパンとの連携により市内計30カ所に拡がっており、さらなる充実を図ります。

日常生活のちょっとした困りごとへの支援では、約400名の市民ボランティアが「天理市生活支援サポーター(通称:てんさぽ)」として登録いただき、生活支援コーディネーターの橋渡しにより高齢者のサポートに当たっています。支援先とのマッチングには「みまもりあいアプリ」を活用し、調整等の事務負担を軽減しています。本アプリには行方不明者の捜索機能がある他、認知症当事者が体験談を語るラジオの機能も備わっており、認知症への理解促進にもつながっています。

政府は昨年「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」を制定しました。本市では、オレンジサロンなど当事者や家族が気軽に相談できる場づくりに取り組んできました。メディカルセンターの地域包括ケア広場「まちかど相談室」でも認知症に関する相談業務に重点的に取り組み、本市が養成した認知症サポーターの活動拠点として参ります。

公文教育研究会学習療法センターと連携した「活脳教室」は、これまで5年間で累計23教室を開催し300名を超える高齢者に参加いただきました。約140名の方が教室サポーターとして活躍くださったおかげで概ね9割を超える受講生の認知機能が維持・改善されており、効果検証の段階は十分に超えたと考えています。

教室の修了後は、継続して活脳に取り組む新たな居場所として地域での自主運営で「活脳クラブ」が実施されています。生活支援コーディネーターと地域包括支援センターの協力も得ています。現在18クラブで200名を超える方が参加されており、令和6年度は更に1クラブが加わる予定です。令和6年度は活脳教室3カ所の新設を目指しつつ、修了後も継続して生活の質改善につなげるため「居場所づくり」に取組みます。

転倒予防や嚥下障がいの予防のための本市オリジナルの「STEP」体操も、介護予防リーダーのご尽力により拡がってきました。天理駅南団体待合所やメディカルセンター内まちかど相談室の広場を中心に「いきいきはつらつ教室」内で実施していただいています。
また地域包括支援センターや生活支援コーディネーターの支援により、「通いの場」が市内60カ所に設置されています。地域の皆さんが主体となって住民同士が交流し、見守りあう取り組みに育っています。リハビリ職の介入により体力測定を行い、健康意識の向上にもつなげています。

天理市立地適正化計画は前栽駅周辺地区を「メディカルセンターを中心とした、医療・福祉・介護の都市機能に特化した地区」と位置づけています。メディカルセンターと隣接した「天理メディカルイースト」では、診療所や人工透析室等の医療施設の他に、サービス付き高齢者住宅と幼保連携型認定こども園が併設されています。同施設では、保育施設の子どもたちとサービスを利用する高齢者が定期的に交流し、子ども達とのコミュニケーションを通じて高齢者の健康づくりにつなげています。こうした成果をもとに、「みんなの学校プロジェクト」の中でも通いの場づくりを重視し、天理らしい多世代交流による高齢者福祉の向上を目指して参ります。
持続可能な介護保険事業に向けて、令和5年度は「天理市高齢者福祉計画・第9期介護保険事業計画」を策定しました。本市は第8期までの間に地域密着型サービス施設として小規模多機能型及び認知症対応型グループホームをそれぞれ7ヵ所、市内の小学校区毎に配置し、きめ細やかな介護体制の確保に努めてきました。
第9期(令和6年度~令和8年度)期間中には、いわゆる団塊世代が75歳以上となる令和7年を迎え、令和22年には高齢者人口のピークがやって来ます。このような状況の中、今後ますます重要性が高まる在宅医療・介護連携の強化として医療機関、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、介護事業所のほか薬剤師やリハビリ職等の医療従事者も含めた医療・介護関係者の連携強化を進めて参ります。

健康推進事業では、子宮頸がんワクチンの接種機会を逸していた方へのキャッチアップ事業が令和6年度に最終年度を迎えますので接種率向上に努めます。乳幼児定期予防接種では百日咳・ジフテリア・破傷風・ポリオにヒブを加えた5種混合ワクチンが令和6年度より定期接種となり、政府方針に基づき医師会と準備を進めます。

がん検診は令和5年度秋からWEB申し込み開始し、受診者の利便性の向上に努めます。また受診増進を目的として、インセンティブとして受診者にイチカポイント1,000ポイントを付与します。
また、子宮がん検診と乳がん検診の同時受診や、骨粗しょう症検診との受診に対して減額を行います。「がんとの共生」の分野では、がん治療によって起こる脱毛や乳房切除などの外見の変化による心理的負担の軽減が重要です。
がん患者の悩みを和らげ社会参加を促進するため、アピアランスケアとして医療用ウイッグや補正具等の購入費の補助事業を開始します。子宮頸がん予防接種やがん検診の重要性、若いころから自分の乳房に関心を持つ習慣「ブレスト・アウェアネス」を生活に取り入れることの大切さについて、天理大学医療学部と共催で実施する「まちの保健室」での啓発を行っており、令和6年度は天理駅南団体待合室を活用して開催予定です。

障がいの有無に関わらず地域の一員として安心して暮らせるまちづくりでは、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築に向けて、医療、障がい福祉、介護、住まいなど包括的に対応できるよう「天理市第7期障害福祉計画」において関係機関と検討を進めることとしました。
また、市が実施する集団方式での胃がん検診及び肺がん検診を受診できない身体障がい者に対して、胃内視鏡検査や胸部エックス線撮影検査に係る費用の一部を助成します。

第三の柱は「市民の命と暮らしを守る安全・安心のまちづくりの実現」です。

能登半島地震の他にも豪雨・台風などによる自然災害が相次ぐ中、本市は「天理市国土強靱化地域計画」に基づき令和6年度までの5カ年で道路網の整備や橋梁の長寿命化、防災士の育成などに取り組んできました。令和5年度は奈良県で線状降水帯が発生し、避難所を開設した他、河川氾濫・土砂崩れ等に対して、消防団や建設業協会のご協力を得てパトロールや応急措置に当たりました。令和6年度は土砂災害警戒区域の住民に対して、避難情報等を確実に伝えられるよう防災行政無線の個別受信機を配布します。
浸水対策では、特定都市河川浸水被害対策事業として、庵治池の治水活用による整備事業が令和6年6月末に竣工予定です。最大88,000㎥の貯留が可能となり、10年に1回程度起きる大雨のレベルで県営庵治住宅などの浸水が解消され、100年に1度レベルの大雨でも床上浸水は解消する見込みです。
数千㎥の貯水量でも数億単位の予算が必要な地下貯留槽と比較し、概ね1億円の予算で約88,000㎥の貯留を可能としたことは、大和川流域総合治水対策の取組の中で国交省等からも注目されています。また、浸水常襲地である二階堂下ツ道・三の坪周辺地域について、菰池の治水活用に向けて取り組んでいます。県は菰池の構造調査、健全性の確認を完了し、降雨時の流入方法などについて計画を進めています。令和6年度は、地元及び下流域との協議を行いつつ、詳細設計を進め早期の工事着手を目指します。
地震対策では、東縁断層帯の直下型地震や南海トラフ地震が懸念される中、災害時要支援者名簿や個人プランを活用した安否確認などを実践的に行えるよう準備を強化します。能登半島地震では支援物資を被災者の手に届けるための人員不足が課題となっています。本市では自主防災組織と連携し、きめ細かい配給体制が取れるよう検討を進めます。避難所生活における大きな課題として衛生的なトイレの確保が挙げられます。本市はマンホールトイレの整備など行ってきましたが、市制70周年の記念事業の一環としてトイレトレーラーを導入します。

また大規模造成地の崩落や液状化による宅地被害を防ぐため、宅地耐震化推進事業として令和6年度は対象地域の地盤調査を実施します。防災重点ため池の劣化調査や改修計画策定を引き続き行うとともに、橋梁についても3巡目の点検を開始します。

市民の命と暮らしを守る上では、防犯対策の強化も欠かせません。特殊詐欺は手法が巧妙化しており、若年層が「闇バイト」と称して犯罪組織の末端で利用されることも深刻になっています。特殊詐欺被害の7割は固定電話を経由しており、自動録音や着信拒否機能を備えた機器の購入費補助を継続します。

第四の柱は「活力ある地域社会に向けた賑わいの創造」です。

人口減少社会の中であっても、天理で暮らす市民の皆さまの生活の質を高める付加価値を創造することは、コミュニティを維持する上で不可欠です。本市は昼夜間人口比で
昼間の人口が多い奈良県内では例外的な町です。大阪・京都への通勤が遠い本市にとって、住と近接した雇用を確保することは人口減少を穏やかにするために重要です。

京奈和自動車道の整備が進み、郡山JCTと天理インターの周辺、名阪側道の沿線などで工場や配送拠点の新設が進んでいます。本市は投資を促進するため第3次都市計画マスタープランにおいて、これらのエリアを「産業振興地区」と位置づけ工場等の立地を計画的に促進するため、令和5年度は建ぺい率、容積率等の変更を行いました。
令和6年度は事業所立地奨励金や雇用促進奨励金を活用して企業の立地定着支援に取り組むとともに、シャープ株式会社と連携したインキュベーション事業についても奈良県との3者連携事業としてより積極的に進めます。

市中心部から天理東インターをつなぐ別所丹波市線は、令和5年度に道路下を横断する市道の整備を行いました。令和6年度は引き続き周辺市道との接合部の工事を行います。市の南北をつなぐ東井戸堂西長柄線、通称「九条バイパス」の整備は、用地買収が概ね完了した南側から奈良県の整備事業が進んでいます。発掘調査が済んだ一部区域から工事が始まっています。本市も工事用道路に当たる市道拡幅を行うなど早期の開通に向け協力して参ります。

天理市商工会と連携した創業支援では商工会館の新築を受けて令和6年度は大幅に定員を増やす予定です。創業スクールの受講者は、創業時の登記費用や融資の優遇を受けることができます。

天理特産の農産品の振興では、刀根早生柿の沖縄への出荷が拡大しており、シンガポールや香港への試験的な出荷も始まっています。令和5年度は萱生町で奈良県立大学とも連携した柿のPRイベントを開催し、新たな食べ方の提案を行いました。農業体験と観光を組み合わせた「おてつ旅」も令和5年度に受け入れ数が増加し、長い方では約1ヶ月間収穫に参加され人手不足の軽減につながりました。令和6年度も事業を継続し、リピーターの拡大を図ります。

若手就農者のグループ「4H」クラブの挑戦を市が支援する「チャレンジファーム」では、令和5年度に大和スイカを無事収穫し、温度や湿度等のデータを取ることができました。令和6年度はAIの活用や有機栽培も視野に入れてスイカ等の栽培に取り組む予定です。

農業を持続可能にするためには、鳥獣被害の防止も不可欠です。令和5年度は鹿やイノシシ計600頭以上を捕獲しました。令和6年度も狩猟免許の新規取得を支援するとともに、ICTを活用したスマート捕獲、捕獲位置の情報集約などに取組みます。
福住校区では「大和高原福住村プロジェクト」が進んでいます。放棄茶園の価値を有機栽培の視点から見直した福住「里山三年晩茶」は全国の無印良品の店舗で販売されています。パッケージには、学校地域連携で児童がデザインした絵が採用されました。令和6年度はハーブや赤いスイートコーン「大和ルージュ」等と組み合わせた新商品を展開し、規模も拡大します。また試験的な有機堆肥づくりも地域住民とともに開始しました。

これまでの成果を基に、農林水産省が進める「みどりの食料システム戦略」の下、地域イベント「三月市」の機会に「オーガニックビレッジ」を宣言します。地元農家も営農組合化に向けた準備を進めており、令和6年度は今後の圃場整備も見据えて農地と里山の再生を目指します。移住者と地元コミュニティを橋渡しする地元ボランティア団体「椽」と連携した移住支援、自然保育活動へのサポートも継続します。

空き家や遊休施設の利活用は盆地部においても重要です。空き家バンクは希望者に対して物件登録件数が少ないのが現状であり、令和6年度は空き家を放置するリスクの啓発を含めて所有者に登録を促します。

無人駅が地域の交流拠点となった柳本駅舎では、令和5年度に夕涼み会やイルミネーションが復活した他、駅舎内のストリートピアノを活用したコンサートなどが開催されました。旧「柳本町」の町政100周年を記念して伊勢街道沿いの空き家を活用した展覧会も開催されるなど郷土史を活かした賑わいづくりが進んでいます。令和6年度は、この地域の力を柳本小学校の改築計画にもつなげることを目指します。また柳本駅での経験を活かし、櫟本駅舎の利活用方法も引き続き模索して参ります。

郷土史をテーマとして、児童生徒が家族や地域住民と交流する「タイムトラベルシティ」の取組みも、天理大学やなら歴史芸術文化村の協力を得て進んでいます。令和6年度は、天理大学・モンベル共同体とも連携して、「タイムトラベルシティ」をキャッチフレーズに山の辺の道等の観光振興を図ります。10言語に対応した観光カードも新たに作成予定です。

天理市の強みであるスポーツの力を観光や教育などの分野に活かすことも重要です。
天理大学やJTBと共同で進める天理市スポーツツーリズムは、令和5年度にラグビー観戦ツアーや海外柔道家の合宿ツアー、子ども体験ツアーなどが実施されました。
イギリス柔道チームが行った大和瓦の制作体験は非常に好評で、4月に来訪予定の仏柔道チーム向けのツアーなども更なる充実を図ります。

JICA及び天理大学との三者協定に基づくエジプト柔道チームの育成事業では、令和5年度は計6名の海外協力隊員の派遣を行いました。柔道交流をきっかけに、朝和小学校とカイロの日本式学校のオンライン交流も始まっており、令和6年度は交流校の拡大を目指します。

国内外との交流事業は、文化芸術面でもワールドフェスティバルなどで進んでいます。同事業には駐大阪インドネシア総領事が毎年参加され、関西で暮らす各国関係者が交流する機会となっています。子ども達から高齢者まで多世代が舞台を創るパフォーマンスフェスティバルも令和5年度は障がい者ダンスチームが県外から参加されて輪が拡がっており、令和6年度も秋に実施予定です。

市内自治会が主催する交流事業に、ウクライナ人留学生を招待する事例も出てきました。ロシアの侵攻開始から2年が経ち、いまだに和平の道筋は見えませんが、本市は天理大学と連携して奈良県内で最多の避難者を受け入れており、市内外の有志からの寄付金も活用しつつ支援を続けて参ります。

河瀨直美監督が主催する「なら国際映画祭」との連携では、同監督がプロデューサーを務める大阪関西万博での事業について奈良県や関係市町村と共同企画を練っています。
令和5年度は若手監督を育成する「ナラティブJr.」事業として、天理大学や市内各地を舞台として短編映画を制作しました。本作は令和6年秋のなら国際映画祭での上映をはじめ、他の映画祭にも出展予定です。
「ナラティブJr.」事業にかかる予算は、企業版ふるさと納税による寄付で全額を賄いました。財政に余裕がない中で、天理第九合唱団等への活動助成についても、ふるさと納税を活用しています。今後も、文化芸術やスポーツの振興などに対し、ふるさと納税を有効活用できるよう努めます。

令和6年度は天理市制70周年の記念すべき年です。5月には天理市PR大使の辻本美博氏が市内中学吹奏楽部と作り上げてきた「コフフンフェス未来ステージ」と共同開催の形で記念式典を実施します。全国からヒップホップダンサーが集う「天理グッドフェローズ」なども70周年に向けて有志が準備しており、オール天理で天理らしい活力を高める一年にして参ります。

第五の柱は「人口減少社会に適応した持続可能な行政サービスの実現」です。

学校を地域コミュニティの核とした公共施設の再編に加えて、限られた人員でできるだけきめ細やかな行政サービスを維持発展させるためには先端技術の活用が不可欠です。

政府は令和7年度末までに住民情報システムの20業務を標準準拠システムに移行するよう基礎自治体に求めています。システム標準化によって自治体運営の効率化、システム開発や運用コストの削減、データの連携、ベンダー間の競争の促進が図られることが目的とされています。

本市は政府が定める期限を前倒し令和6年11月に概ね移行を完了します。そして、「自治体窓口DXSaaS」すなわちタブレット等を活用した「書かない窓口」の令和7年度中の実装に向けて令和6年度は準備を進めます。これは、単に紙の申請書を使用しないという趣旨ではありません。様々な情報をデジタル化して取り込むことをきっかけに役所手続き全般の合理化を図り、対面が必要なサービスに労力を向けることができる環境をつくります。令和6年度は1階市民課窓口前に設置している証明書自動交付機もキャッシュレス決済や多言語対応ができる新機種に更新します。

デジタル地域通貨「イチカ」事業は、物価高騰対策や子育て世帯への支援、妊産婦に対する経済的支援、健康寿命延伸のための「健康ポイント事業」など活用の幅が広がっています。地元消費を通じた支え合いの町づくりを目指す「イチカポイント事業」は参加店舗が67店に増加し、子ども食堂やフードバンク、スポーツ活動などへの寄付につながりました。令和6年度も政府の経済対策なども踏まえつつ、消費と共助の好循環を目指して参ります。

デジタル関連事業を推進し、デジタル市役所への転換を図る上で人材の育成が急務です。令和6年度も地方創生デジタル専門人材派遣事業の枠組みを活用し、連携協定を結ぶNTT西日本からの人材を受け入れます。

市役所全体のパフォーマンスを向上させるためには、働き方改革を進め職員一人一人がやりがいを持って働くことができる職場づくりが重要です。令和6年度は男性育休100%の達成を目指すとともに、育休明け職員の時間短縮勤務や時差出勤、テレワークなどの柔軟な運用も徹底します。有償で地域貢献を行う職員の副業も認めており、積極的な制度利用を促します。生成AIを活用した議事録の作成なども進めます。

行政の効率化のためには、全ての市民サービスを本市単独で充足しようとするのではなく、他市町村との連携や広域化も必須です。
奈良県広域消防は下北山村での土砂崩落事故や能登半島地震の対応においても活躍し、広域化当初の10年前と比較して救急需要が4割増加しているにも関わらず、人員数を抑制しながら現場展開能力を向上させています。本市は、全体最適化と市町村間の公平な費用分担を議論する企画調整会議の部会長の立場で貢献しています。

県域水道一体化に向けた取り組みでは、令和7年度からの事業統合に向けて、水道料金体系の整理や、市町村が意思決定に十分参画できる運営体制づくりなどの議論に積極的に参画しています。
本市をはじめ10市町村が参加するごみ処理の広域化事業では、山辺県北西部広域環境衛生組合による新ゴミ処理施設の建設が本格的に進み、令和7年1月から試験運転を行う予定です。地元をはじめ10市町村民との信頼関係を第一に、環境保全に万全の対策を取ることはもちろん、ごみ処理施設を社会インフラとして捉えて事業を推進します。廃棄物エネルギー発電や省エネによる脱炭素社会への貢献、災害時の防災拠点としての活用、見学・温浴施設の整備による周辺地域との共生、環境学習の場の提供など、地元振興にも寄与することができる新施設を目指します。
また、周辺道路の渋滞を緩和するため、インターネットでの予約が可能なごみ持込予約システムの導入を行います。新施設を令和7年4月末に稼働させるため、引き続き全力を尽くして参ります。

新ゴミ処理施設の建設と並行し、各市町村が引き続き個別に担当する収集作業及びごみの受入れ検査のため、天理市清掃管理事務所をリサイクル処理施設の隣地に新設します。稼働を停止する現クリーンセンターの焼却施設及び粗大・リサイクル施設塵芥処理施設は、政府の循環型社会形成推進交付金を活用して解体するためには、新施設の稼働の翌年、すなわち令和8年度中に工事に着手する必要があります。令和6年度は循環型社会形成推進地域計画の変更を行い、現クリーンセンターの地歴調査及び財産処分報告書作成を行います。
また循環型社会・脱炭素社会に向けた取り組みとして、本市は「天理市ゼロカーボン宣言」及び「天理市プラスチックごみゼロ宣言」に基づく施策を進めています。太陽光発電設備は土砂災害警戒区域などへの設置は抑制に努める一方、民間資本を活用して南中学校屋上に太陽光発電システムを設置しました。
プラごみの削減では、市役所に使用済みインクカートリッジ、文具やキッチンスポンジの回収箱を設置している他、市内小学校においても文具や歯ブラシの回収箱の設置を予定しています。「みんなの学校プロジェクト」の一環としても廃棄プラスチックの再利用を地域全体で進め、「サーキュラーエコノミー」の実現に向けて取り組みます。

以上、令和6年度予算と主要施策の概要についてご説明しました。

人口減少社会に適応すると宣言することは、地方創生を諦めた「敗北宣言」では決してありません。超少子高齢化を伴う人口の減少が不可避の現実であることを正面から認める。将来に向けて市民サービスを守り少しでも豊かにするために、惰性や経緯論に囚われず、「市民のため」という本来の目的に常に立ち返る。限られた予算と人員であっても役割分担を柔軟に見直し、チーム全体のパフォーマンスを最大化する。天理市制70年間に諸先達がこの町に育んで下さった強みを活かす。その最も重要なものは、地域コミュニティの絆であることを改めて確認し、支え合う地域の絆を再構築していく。

令和6年度の諸施策は、人口減少社会に適応していく天理の新たなスタートの年だと捉えています。本予算案を慎重にご審議いただき、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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