二期目の任期満了後に向けて「命と暮らしを守りながら、コロナ後の社会変革を見据えて、持続可能な支え合いのまちづくりに取り組みます」

来年秋に、二期目の任期満了を迎えるに先立って、本日(12月15日)、天理市議会で市本議員の質問にお答えし、今後の市政にかける思いを下記のとおり表明しました。

新型コロナ対策に引き続き全力で取り組むとともに、コロナ後の社会変革を見据えて、持続可能な支え合いのまちづくりを行っていくために、いっそう精進して参ります。

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来年秋に二期目の任期満了を迎えるに先立ち、市本議員のご質問にお答えし、今後の市政にかける所信を申し上げます。

平成二十五年に私が市政をお預かりしてから、早いもので七年余りが経ちました。三年前には、自らの不徳により、多くの皆さまにご不快な思いをおかけしたにも関わらず、再びご負託を頂きました。己の未熟さを思い知り、学ばせていただく中で、改めて天理市民の皆さまの幸福と町の発展のため、全身全霊を捧げる思いで、この三年間努めて参りました。とりわけ、本年、全人類が直面するコロナ禍という未曽有の困難に対し、市民の皆さまの不安や苦しみを、いささかでも和らげるために、あらゆる努力を尽くさなければならないと思い定めて、対策に当たっています。

二期目の三年間を含め、この七年間を振り返りますと、寄付金の大幅な減額による歳入減がありながら、本市は毎年概ね十億円前後の黒字会計の下、将来負担を軽減しつつ、暮らしの安心安全や地方創生など様々な分野において、多くの事業を成し遂げることができました。
「共に創る」「共創」の精神を掲げスタートした市政において、地域及び市議会の皆さま、市職員各位と一緒に汗を流させていただき、「支え合い」の大切さを何よりも学ばせていただきました。このことが、「傷つけ合うより、支え合い」を柱とする本市の新型コロナ対策の上でも礎となっています。皆さまのご協力とご鞭撻に、心からお礼申し上げます。

【これまでの共創と支え合いのまちづくり】
〇教育環境の充実
安全で快適な教育環境の充実では、前栽小学校や山の辺小学校の体育館の改築改修に続き、長年の懸案であった北中学校及び南中学校の建て替えに着手しました。今月の北中仮設校舎移転をもって、市立小中学校の100%耐震化を達成できます。また、全ての学校で、災害時の避難所にも予定している普通教室への空調設備の整備、トイレの洋式化、児童生徒一人一台のタブレット配備を実現しました。児童それぞれの特性に応じてきめ細かい教育を行うため、スクールカウンセラーやサポーターを倍増し、教職員の負担軽減のためのシステム導入も行いました。

多様化する働き方や家庭環境に対応するため、学童保育所と小学校の連携を深め、校舎を活用することで、預かり人数を約二倍の八百名まで拡大し、コロナ禍による長期休業期間も多くのご家庭を支えることができました。幼稚園の長時間預かりも、全園に広げました。

〇子育て家庭支援
子育て家庭への支援では、通院医療費の助成を中学三年生までに拡大しました。妊娠期から就学まで切れ目ない子育て支援の拠点として「はぐ〜る」を整備し、自治体として全国初で育成したドゥーラーが産後支援に当たっています。食を通じて多世代がつながる「子ども食堂」などの取組も、市民の有志と共に市本議員はじめ多くの議員各位にもご尽力いただき、市内の幅広い地域に根付きました。コロナ禍の中でも、感染対策を工夫され、配食の形式で再開されつつあり、多くのご家庭や地域の高齢者をお支え頂いています。

〇医療介護連携と福祉の充実
共に支え合う福祉では、医療と介護をつなぐ地域包括ケアの拠点として市立メディカルセンターを整備しました。同センターと各地域の公民館や集会所を結びながら、介護予防リーダーを中心に、市民協働による健康づくりの取組が進みました。全国初の成果連動型事業として注目される「活脳教室」は、睡眠データの活用や、フランス発のケア手法の導入実証など、先端分野での新たな官民連携につながっています。

介護では、小規模多機能型居宅介護施設を市全域で整備し、訪問介護看護サービスとの併設も開始しました。情報通信技術を活用し、ケア情報を医療と介護の現場が共有する事業も着実に進んでいます。

民間との連携では、いわゆる「買い物弱者」支援として、移動販売事業が市南部から高原地域にも広がりました。高原では、地域公共交通の再編によりコミュニティバスを延伸し、通院や買い物の移動支援も強化しました。

〇安心安全の町づくり
安心安全と活性化のためのまちづくりでは、全市的に防犯灯のLED化を実施し、全ての鉄道駅と各小学校前の防犯カメラの配備、井戸堂校区でのゾーン30の導入等を行いました。浸水に悩まされてきた二階堂校区では、貯留槽を設置して二階堂駅北の浸水を解消し、また二階堂小学校グラウンドの地下貯留施設も完成しました。地元代表者も参加いただいているプロジェクトチームにおいて、三の坪や庵治地区でのさらなる対策を検討しています。

〇天理らしい地方創生・活性化事業
天理駅前広場コフフンは、多世代が日常的に集い、つながる地方創生の全国的事例として市内外で評価をいただき、市民生活に定着しました。西側改札を新設した柳本駅も、無人だった駅舎が、観光と地域の絆づくりの拠点となりました。前栽駅及び二階堂駅では、それぞれエレベーターやスロープの設置、多目的トイレの整備などバリアフリー化が進みました。

鉄道駅周辺の活性化と連動した道路アクセスの向上では、名阪側道の開通により市中心部と名阪国道との通行利便性が飛躍的に改善されました。都市計画道路についても、長年途切れていた北大路線が市道と連結し、勾田櫟本線が国道二十五号線とつながりました。市の南北をつなぎ、緊急車両の通行や通学路の安全確保のためにも重要な九条バイパスについても、県道として事業化され、用地買収が進んでいます。活性化事業や道路アクセスの改善、企業立地支援の充実等により、旧消防署跡地への大型書店誘致をはじめ、市内で飲食店や工場等の立地が一定程度進みました。民間ホテルも一店舗が開業した他、近年中に更なる開業を見込んでいます。就業支援では、ハローワークの分局を併設した「天理市仕事センター」を設置し、新型コロナ対策に当たり、市内事業所への支援センターの役割も果たしています。

また、シャープ天理工場の遊休スペースを活かし、ベンチャー企業を誘致育成するインキュベーション事業に取り組みました。官民連携により、インフラの補修管理や測量に、超高速のローカル5Gや高解像度の8K映像を活用する実証実験も開始しています。

〇新型コロナウイルス感染症対策
これらの事業を進めていく中で、本年は、新型コロナウイルス感染症への対策が、市民の命と暮らしを守るための最優先課題等となりました。特別定額給付金や子育て世代への臨時特別給付金をはじめとする政府の助成策を、できるだけ速やかに実施してきた他、「天理支え合い券」、「天理おうちごはん券」「天理学び支え合い塾」「新しい外食スタイル応援助成金」など、支え合いを柱として本市独自の事業を実施して参りました。大橋議長には常に市対策本部に参加いただき、市議会から格別のご理解とご協力を賜っておりますこと、改めてお礼申し上げます。
メディカルセンター内での休日応急診療所の運営、地域包括ケア、避難訓練での協力など連携を培ってきた医師会と連携し、「天理地区PCR検査センター」を開設できたことにより、多忙を極める保健所を補完し、感染拡大の防止のため本市独自に検査手配を行う体制を構築することもできました。天理大学では集団感染も発生しましたが、これまでスポーツや芸術を活かした地域振興で連携を深めてきた同大学と緊密に協力することができ、教育実習やアルバイトめぐって学生に不当な扱いが発生した際にも、全国に向けて是正を共に訴え、文部科学省はじめ多大な支援を得られました。
市議会と地域と行政が三位一体となり、「共創」と「支え合い」のまちづくりに取り組んできたことが、今このコロナ禍にあって大きな力になっていると私は確信しています。

【コロナ後を見据えたこれからの取組】
〇ポストコロナ時代の捉え方
年を越しても今しばらくは、新型コロナの影響が継続し、命と暮らしを守る努力が最も重要な時期が続くと思われます。しかし、コロナ禍の下で、行政や教育現場のデジタル化、本市が先駆けて取り組んできたテレワーク等を、社会全体として急激に進めざるを得ない状況となったように、今は単に「耐え忍ぶ」時でなく、コロナ後の社会変革に向けた種を蒔くべき時と捉えなければなりません。持続可能な社会に向けて、経済社会のグリーン化も本格化することが予想されます。国際社会のあらゆる分野において、これらの変革を負担や重荷としてではなく、変革、イノベーションの機会に変えていけるかどうかが、生き残りを賭けた鍵となるでしょう。

〇「デジタル市役所」への転換
本市では、新型コロナの影響により懸念される税収の減少に加えて、かつて年間十五億円あった寄付金が、大きく下落する見込みです。税収に換算すれば、以前よりも数十億円程度も年間の収入が少ない状態で、市民サービスを維持していかなければなりません。また、地方創生の努力により、国立社会保障人口問題研究所が行った二〇二〇年の推計人口との比較では、〇歳から十四歳までの人口は推計値を若干上回り、子育て世代の転入などによる一定の効果はあったと推測されるものの、二十代から三十代前半の転出が多い状況は依然続いており、全体としての人口減少が進んでいます。

令和元年度から集中的に取り組んでいる行財政改革では、組織の見直しや働き方改革により人件費の合理化を進め、その他事業の見直しにより年間約四億円の削減と言う第一段階の目標は達成しましたが、これはコロナ前の状況です。
財政がさらに厳しさを増す中で、限られた財源と人員を最大限に活かし、よりきめ細かい市民サービスを実現していくための最も有望な手段として、令和三年度中に「デジタル市役所」への転換を目指して取り組んでいきます。
市民の皆さまからの申請や市役所内部での処理を、可能な限り包括的にデジタル化するとともに、手書きを希望される高齢者等の皆さまについては、デジタル情報に読み込む等の工夫を行い、誰も置き去りにしないデジタル化を実現します。デジタル化により事務作業を合理化することで生まれた余力を、人同士の対面で行う必要がある業務等の充実につなげます。保育所申請のデジタル化などは、働くご家庭の負担を軽減し、事務を効率化する上でも双方の効果が大きいと考えています。

〇市民サービスを守るための公共施設マネジメント
また、将来にわたって現在保有する全ての公共施設を維持管理していくことは、本市に限らず、あらゆる自治体にとって困難です。施設の統廃合が、すなわち市民サービスの低下につながらない形で改革を進めていくためには、従来の使用方法にとらわれない柔軟な活用により、市民目線、利用者目線でのファシリティマネージメントを進めていかなければなりません。
小規模特認校制度と移住促進により、在校生徒数が倍増した福住小学校は、来年度より中学校と一貫校化します。また、幼稚園と保育所の一体的な運用により、限られた財源の中で公立の保育枠を拡げるための第一段階として、令和四年度より、丹波市幼稚園を南保育所と合併し、前栽幼稚園をこども園化します。合わせて、民間保育園の誘致も継続し、待機児童の解消を図ります。

〇子育て支援や地方創生に向けた多様なパートナーとの連携
また、これまで櫟本校区で先進的に進められてきた、公民館と連携して学校校舎も積極的に活用し、地域全体で子どもを育みながら多世代の絆を創る事業を、全市に広げていきます。市民協働による子育て充実では、豊かな自然を活かした保育事業、各地の子ども食堂、おてらおやつクラブによるひとり親家庭への支援等との連携をいっそう進めます。

天理の宝である豊かな自然、里山、農地を守り、類まれな芸術文化、スポーツを活かして、天理で暮らす魅力、天理を訪れる価値を高めるために、私たちが取り組んできた地方創生の努力と方向性は、SDGsをはじめ持続可能な社会をめざすコロナ後の世界に向けて、さらに重要性が高まると確信しています。今あるもの、これまでに守り育まれてきたものを大切にしながら、新たな価値を創造する取組を、市民有志、天理大学やアーティスト、なら国際映画祭関係者など、これまで共に歩んできた様々なパートナーとともに推進します。

〇周辺市町村との連携
本市単独で全ての市民サービスをまかなう発想ではなく、周辺の市町村との連携を深めていくことも重要です。本市を中心市として磯城郡三町及び山添村と結成した定住自立圏では、施設の相互利用やコミュニティバスの乗り入れ、介護認定の共同化等の取組が着実に進んできました。令和三年度からは、山添村と共に情報システムをクラウド化します。
十市町村による山辺県北西部広域環境衛生組合が進めるごみ処理の共同化事業では、新施設の令和七年春の稼働に向けて取り組んでいます。環境保全に万全を尽くしながら、高効率発電を行い、環境教育や地域の振興にも寄与する施設としていくことは、事務組合の管理者を仰せつかっている私にとって最大の使命であると考えており、地域の皆さまとの信頼関係を第一にやり遂げて参ります。

〇結び
これらの事業を進めていくため、令和三年度予算は骨格予算ではなく、本格予算として三月議会にお諮りしていく予定です。新型コロナ対策に引き続き全力を尽くしながら、コロナ後を見据えて、支え合いの町づくりを市民、市議会の皆さまとご一緒に進めていくために、私自身が再び市民の皆さまから市政のご負託をいただけるよう、いっそう精進して参ることをここに表明いたします。

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